2018-02-15

【秘訣】2018年の積雪から構造を考える。「設計積雪量」②


ゆうです。

ようやく新潟は大雪が収まりそうです。

このタイミングで今回の大雪から「設計積雪量」について再考察してみようと思います。

→前回の続きです。『2018年の積雪から構造を考える。「設計積雪量」①』



まず2018年の積雪が例年の平均に比べ、どれほど多かったかを見てみます。

※「垂直積雪量」・・・行政庁が定めている積雪量の指針
※「設計積雪量」・・・設計者が決める積雪量。これを元に構造計算される。


まずは「新潟市」

新潟市2018積雪量

新潟市の垂直積雪量は1.0m
(グラフの最大値を垂直積雪量に合わせている。)

過去20年の平均積雪量と比べると今年は数倍の積雪があったことがわかります。

2018年の最大積雪量は80cm。

垂直積雪量の80%まで積もったということです。



続いて「長岡市」



 長岡市2018積雪量

長岡市の垂直積雪量は2.5m

長岡市も過去20年の平均積雪量と比べると倍ほどの積雪がありました。

2018年の最大積雪量は約150cm。

垂直積雪量の約60%まで積もりました。



最後に「柏崎市」

 柏崎市2018積雪量

柏崎市の垂直積雪量は1.3m

柏崎市も過去20年の平均積雪量と比べると数倍の積雪がありました。

2018年の最大積雪量は約95cm。

垂直積雪量の約70%まで積もりました。




では、今年の豪雪は何年ぶりだったのでしょうか。

1990年から2018年までの積雪量を詳しく見てみます。


新潟市では2010年に積雪約80cmを観測しています。

今年は8年ぶりの大雪でした。

1990年から現在までで垂直積雪量(1.0m)を超える積雪はありません。

最大積雪量は約80cmで垂直積雪量の約80%です。



長岡市では2012年に積雪約160cmを観測しています。

今年は6年ぶりの大雪でした。

1990年から現在までで垂直積雪量(2.5m)を超える積雪はありません。

最大積雪量は約160cmで垂直積雪量の約64%です。



柏崎市では2012年に積雪約110cmを観測しています。
(僕はオーストラリアにいたため体験していない。)

今年は6年ぶりの大雪でした。

1990年から現在までで垂直積雪量(1.3m)を超える積雪はありません。

最大積雪量は約110cmで垂直積雪量の約85%です。



以上をまとめると、


・垂直積雪量を超える積雪は起きていない。(ここ28年)

・垂直積雪量の約80%の積雪が6年に一度ほど起きる。
 (近年は特に「雪の多い年と少ない年の差」が大きくなってきている。)

我が家の車庫の屋根の上に積もる雪は80cm以上。(柏崎市)
雪止めアングルなしのため定期的に落雪している(→雪止めアングルがあればもっと積もる。)




................


ここからはそれぞれの設計者の判断です。



「積雪量を何メートルで設計するのか。」



僕は、

(過度な)雪下ろし低減はせずに

垂直積雪量を設計積雪量とする。

ことが『素直で堅実な設計』だと考えます。


※「雪下ろし低減」・・・設計積雪量を1.0mまで減らして計算して良いという特例措置。
 (あくまでそれ以上の積雪が合った場合は雪下ろしすることが前提となる。)


ただし、長岡市のように垂直積雪量が多い地域で、近年の積雪量が垂直積雪量より著しく少ないなどの場合は、現状に即して設計積雪量を低減する判断はあり得る。

また「耐震等級3」の家を設計する場合、設計積雪量が多いと必要になる壁量が多くなり間取りの制約が大きくなるため、建て主様と協議の上、設計積雪量を低減して設計することもあり得る。





................


僕は「垂直積雪量を設計積雪量とする。」と書きましたが、新潟県内でそれをしている建築会社はほとんどいないと思います。



まず、多くの会社が「構造計算をしていません。」


これは「積雪は考慮していない。」という意味です。


こんなことが新潟県内でまかり通っていていいのでしょうか。

構造計算をしていない設計者は今年の大雪を見てどう思ったのでしょう。

建築業界は旧態依然としたところがあります。

自衛のため建て主側も勉強しなければなりません。




また、構造計算をしている会社でも、
「雪下ろし低減をしている(=積雪は1.0mで見ている)」会社が多いです。
(実際は雪下ろし出来ないプランにも関わらず)


これは大きな積雪量で構造計算すると、必要な壁が多くなり開放的なプランが作りにくいからです。
(ここ数年は開放的なプランが流行っている。)



垂直積雪量で設計することを「オーバースペックだ。」と考える設計者もいるでしょう。


これは一理あります。

設計者に根拠と思想があり設計積雪量を減らしているのであれば良いと思います。

積雪は確率の問題であり、間取りやコストとのバランスも重要だからです。

(多量の積雪が屋根に載っている時間は数日でしかないこと。また、構造計算をしていない家であっても雪の重みで倒壊することは滅多にないということもある。)




しかし、万が一は必ず起こります。

東日本大震災が起きたように。

震災の日は3月上旬でしたが、あれが1月などの積雪が多い時期であればその被害はもっと大きくなっていたでしょう。

近年の異常気象が加速し、今までにない量の雪が降ることもありえます。


「そのときに地震がきたら?」


傾いた家にいられず寒い避難所で過ごさなければならなかったり、最悪の場合家が倒壊することもありえます。


僕は新潟で二度の震災を経験しました。僕の実家は半壊、妻の実家は全壊しました。

東日本大震災のボランティアで石巻の町に数週間キャンプして瓦礫の撤去などをしながら変わり果てた街を見ました。

僕は実体験から、家に大切なものの優先順位を理解しているつもりです。



もちろん最終的な決定は建て主様がすべきです。

上に書いたとおり、災害は確率の問題であり、間取りやコストのバランスも大切だからです。


しかし、設計者はこれらを説明する義務があると思っています。


「耐震等級」「設計積雪量」に対して十分な説明をしている会社はどれだけあるでしょうか。

はっきり言ってとても少ないと思います。




「良い家を建てるためにはどうすればよいのか。」




最終的には、
建て主が自ら勉強し、良い設計者を自分でみつけるしかありません。


僕はそれを応援しています。

長くなってしまいましたが、これから家を建てられる方の参考になれば幸いです。

雪に埋まる我が家。
とても大変な冬だったが、設計者として大切なことを再確認させてくれた。




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